かなりご無沙汰

すっかり更新をしなくてしまい早半年… 早いもので今年ももう終わりが見えてきました。2022年、あっという間のような、怒涛のような、コロナ禍の影響を受けつつも戻るところは戻った日常みたいなものもあり、振り返ると不思議な感覚の一年だったかもしれないです(すでに年末モード、、、笑)。

 

Hikkiのことや楽曲に関して、また色々追いかけてのファン活動はtwitter(@jack_m_s)の方に主に書いてますけど、やはり何かまとまった文章を書く癖も忘れたくないなと思って、誰も見てないと思いますがブログもちょこちょこ上げてみようかと思っています…笑。

 

今年はニューアルバム「BADモード」が出て、だいたい新曲や新しいアルバムが出るとそれ一辺倒になりがちですが、今回は意識して過去の楽曲も日ごろ聴いています。特に今回のアルバムは、Utadaとしての「Exodus」の色味も混ざってたり、直近の「Fantôme」「初恋」を経ての「BADモード」というのも大変面白い流れになっているので、その辺りの聴き比べというか、あえて差を感じるのではなくライブのセットリストのようにシームレスに聴いてみるのも一興だったりします(笑)。

 

英語と日本語の曲というと、出発点は「光」と「Simple And Clean」ですが、Utadaの制作と宇多田ヒカルの制作の狭間で作られた「Sanctuary」と「Passion」が一番バイリンガルな曲なのではないかなと捉えているので、「BADモード」を聴きながら「Sanctuary」や「Passion」を聴いてみるのも楽しいです(サウンドやミックス的な側面も含めて)。とにかく日本語の語感や響きを大切にしたという「Fantôme」から、休止以前のような日本語に英語のフレーズを混ぜるポップさのある曲が多かった「初恋」を経て、日本語と英語のスイッチを巧みに切り替えて楽しませてくれる「BADモード」という3作の流れはなかなか面白いですね。

 

2022年。コーチェラの出演やカルティエのタイアップ、久々のTV出演、シーパラダイスで撮影されたビデオなどなど、アルバム以後も話題が多かったですが、我が儘ながら「で、次の新曲は…?」という気持ちになってきてしまっている今日この頃。活動休止期間やその他Hikkiが表立った活動してなかった期間などを振り返ると、これだけ露出もある中で本当に贅沢な話なのですが…。ネトフリのドラマは新曲はなさそうですし、まもなくのデビュー24周年記念日は「First Love / 初恋」の7インチLPシングルがまず話題の中心のようですね。来年の25周年に向けて、12月9日は何かビッグな発表がありそう、というかあって欲しいと願っていますが…。

SAKURAドロップス

「シン・エヴァ」公開から1年のエントリーを書こうと思い続けていたのに、あっという間に4月に入ってしまいました。。

 

季節はどんどん移ろって、桜の季節も通り越そうとしています。まさにSAKURAドロップスのごとく、桜の雨が降っている今日この頃。東京は開花からの気温が低く、そこまで酷い風雨もなかったので、今年の桜はかなり長く楽しめた印象。毎年このくらい楽しめるといいんですけどね。開花してからの気温が高いと1週間も持たず葉桜になってしまう年もあるので……

 

SAKURAドロップスといえば実際に桜の散った後の初夏を描いている歌ですので、この季節にふさわしいのは桜流しの方ですね。と言えど、桜流しも厳密には歌詞に「桜」が出てくるわけではないので、花が散っていく様子であればどの季節の植物にも重ねられる歌。「桜流し」という言葉自体は、桜が散って流れている様子だけでなく、桜を散らしてしまう無情の「雨」を指してもいるようで、この辺り季節や心情のレイヤーの重ね方はSAKURAドロップス桜流し、どちらも宇多田ヒカルらしく素晴らしい作り方をしてますね。奇遇にも2020年はSAKURAドロップスから20年、桜流しから10年という年でもあります。となると10年に一回くらい、桜の歌を歌っても(作っても)いいんじゃない? と思ったり 笑>Hikki

 

思えばSAKURAドロップスはリリース以後のライブ・コンサートでは必ず歌われている楽曲でもあります。個人的には「Utada In The Flesh 2010」でのピアノ弾き語りバージョンが一番好きです、シンプルなバンド演奏っぽいアレンジで。「WILD LIFE」のアレンジも素敵でしたが、少し大人しすぎて好みではなかったり。やはりSAKURAドロップスは、あのドラマチックなエンディングが好きなので。Hikkiの楽曲でエンディングが一番好きな歌と聞かれれば、迷わずSAKURAドロップスを選ぶと思います。

 

今年は桜の花を長く楽しめたからか、葉桜の緑が深くなる新緑の季節も楽しみです。GWあたりには桜も完全に葉っぱになるでしょうか。寒空に枝だけだった冬、美しい花を咲かせた春を経て、鬱蒼とした葉桜の初夏も爽やかで好きです。アルバムが出たばかりなので新曲等々は先のことでよいとして、また近いうちにインスタライブやってくれないかな♪

手に取れる嬉しさ

「BADモード」初回盤について、アルバム発売日のインスタ生配信「ヒカルパイセンに聞け!」にて、「私から直接届いた感じ」「音楽自体は私の心からダイレクトに出来たものだから、パッケージもそれを反映する」というコンセプトをHikkiが語ってくれ、初回盤の仕様は本当に素敵だなと手に取るたび思っている次第です。一日一度は開けて楽しんでいます(笑)。

 

これまで初回盤が設定されたアルバムは、すべて初回盤の出荷が終了次第、通常盤に切り替わるものでしたが、ここまで仕様の異なるアルバムを同時に発売するのは初めてのこと(First Loveの15周年盤はありましたが)。業界的には10年以上前から一般的な売り方でしたけど、配信ライブの模様は初回盤が出荷終了次第、販売終了となってしまうわけで、コレクターズアイテムとしてのリリースに振り切っていますが、その分、「Hikkiから直接届いた」なんていうこれまでにないコンセプトの反映された仕様がとても嬉しいです。

 

単純に豪華なBOX仕様、付加価値のたくさん付いたCDというのは世にゴロゴロありますが、送付状を思わせる発送元とバーコードが付いた箱に、新しい歌と写真とメッセージが入って、まるでHikkiから直接届いたような気持ちにさせてくれるアルバムは、この規模のメジャーアーティストではなかなか無いのではないでしょうか。Hikkiらしいアイディアで、これまでの「CDを手に取る楽しさ」とは全く格の違う「手に取れる嬉しさ」を味わわせてくれています。

 

と同時に、明日(3/10)発売のアナログ盤「First Love」「Distance」「DEEP RIVER」の3作品も届きまして、なんだか一気に宇多田ヒカル関連の「物」が増えている状況(笑)。ここまでくればもうアルバムの初回盤の1種でCD+アナログという受注生産盤があってもいいのではと思いますし(他の歌手では既にあるようですが)、フィジカルの形はさらに変わっていきそうですね。ともあれ、手に取れる形でのアルバムリリースを続けてくれることを祈るばかりです…。

発売日!

8thアルバム「BADモード」CD発売日です! 配信開始から1か月以上、いつもよりも「アルバムが出る」というピークポイントが長く続いている感じがして嬉しいです。やはりパッケージを手に取って「受け取った」という気持ちになる方も多いのではないでしょうか。これまでの宇多田ヒカルのアルバムリリースとは異なる形で、いわゆるCD通常盤1種では勝負できないマーケットになったということでしょうから、今後もCDでの発売が続くといいな… と少し不安になる気持ちもありますが、今回の初回盤はHikkiからの嬉しい仕掛けが満載で、パッケージの良さが詰まっている作品になっていると思います。

 

今回は地上波テレビ番組への出演はないようですが、有料配信ライブ、インスタ生配信(今夜!)とファンへ向けてのある程度的を絞ったプロモーションが展開されているように思います。形は異なれど盛り上がりには欠けないというか、コアなファンにとっては嬉しい限りです。インスタ生配信も2020年の5月以来、定期的に続いていて素晴らしいですね。内容とか、Hikkiの調子とか、一部批判もあるようですが…、無料で緩くやってくれていることですし、どこまで求めるかは難しいところですよね。個人的には、Hikkiが好きなように(仕事として)やってくれていれば良いので、とにかく無理をしないで頂ければ。それだけです。

 

「BADモード」はかなりシングルの割合が多いですから、「Distance」や「HEART STATION」に近い印象も受けるのですが、アルバム全体の統一感というとやはり群を抜いていて、この10曲揃えるのを目指して作られたかのようなセット感がありますね。【以下ネタバレですが】初回盤特典のBehind Sceneで、自身の声について悩んでいる様子が語られていましたが、最初にこのアルバムを聴いたときに前述の統一感やサプライズも多く「あ、宇多田ヒカルはエンターテイナーになったんだな」と思ったのですが、やはり自身の声の調子に神経質になっている様子も、そういうところから来てるのかなと勝手に(笑)腑に落ちました。活動再開後~2018年のツアーくらいまでは、声を出すのが怖くなくなったのかな、そこに揺るがない芯が出来たのかな、と思っていたのですが、そこからさらにクリエイターだけでなく、表現者としてのステージを登っていましたね。

 

さて! じゃあアルバムが発売されました、となると今後の活動はどうなっていくのかな? とはいつも思いところで、前回(初恋)はその後年末にツアーがありましたからね。シングル「Face My Fears」の発売も続きました。今回は1月に完成して2月のリリースですから、(もちろん量産して欲しいと思ってるわけではないですが)年内にまた新曲等々、聴ける可能性は十分ありますよね。「君に夢中」や「Time」の英語版もあるかもしれませんし。まあ全然なくてもいいんですけど(笑)、そこはHikki次第ですが、今までの傾向ではというところで。あっという間ですが、今年の12月9日からデビュー25周年イヤーでもあります。そこに向けての動きがある、かもしれませんし。Hikkiのスタンス的にアルバムが区切りでひと休みします、というわけではなく、制作はいつも断続的に続いているものでしょうから、また次にポロッと落ちてくるものを、「BADモード」をヘビロテしながら楽しみにしたいと思います。

聴こえ方の変わったシングル曲

だいたいいつもアルバムとしてリリースされると、収録されているシングル曲の聴こえ方が変わります。新たな一面を知ってもっと好きになったり、自分の中でその曲の意味合いが変わってくる、ということはよくあるのですが、今回は「Time」がグググっと自分に近づいてきた感じがします。

 

初めは「PINK BLOOD」が違う味わいになりそうだな、なんて予想していたのですが、蓋を開けてみると「Time」の存在感が凄くて、特にHikkiのボーカルの躍動感、サビの高音からブリッジ部の中低音の艶やかさ、聴いてるとウットリしてしまうんですね(笑)。もちろんシングルとしてリリース当初から好きだったポイントではあるんですが、こうして既発のシングル曲から新たに加わったアルバム曲まで並べて聴くと「Time」の輪郭がくっきりと見えるようになりました。今回は特にバラードっぽい歌もなく、結構凝った内容の曲が多い中で、「Time」というタイトルにしろ詞にしろ、シンプルですっきりしてる(なのに芳醇みたいな)辛口のビールのような飲みやすさが、他の曲と並べたときに存在感がより際立ったように感じています。

 

冒頭に書いた「PINK BLOOD」は、逆に変わらぬ存在感を放っています。単曲で成立していたあの「自己の確立」みたいな世界観が、アルバムになっても突出したりもちろん引っ込むこともなく、馴染みながらも変わらぬ存在を保っているんですね。まさに曲のテーマと合致しているというか。「One Last Kiss」から「PINK BLOOD」へシームレスに繋がっていて(さらにそこから「Time」にも繋がりますが)、一気にアルバムに引き込んでくれるゾーンになってます。まあ、正直言うと「One Last Kiss」のエンディングは「Beautiful World (Da Capo Version)」へ繋がるオリジナルの形の方が好きなのですが(笑)。でも「One Last Kiss」の最後「♪吹いていった~」の哀愁漂いまくる歌詞・Hikkiの声からほわぁ~と電子音で終わって、「♪Pink blood~」とHikkiの声で始まる「PINK BLOOD」への接続は、オリジナルのスタイルを知らなければすっと入ってくる流れになってると思います。

 

ある意味、宇多田ヒカル作品としては異質な存在だった「Face My Fears」は、シングルとはボーカルミックスの変更もあり、少し控えめな存在感でアルバムに馴染んでますね。「Time」「誰にも言わない」がリリースされた辺りまで、次のアルバムはここに「Face My Fears」も加わるとどういうまとまりになるんだろう? と思っていた時期もあるのですが、そこから「One Last Kiss」「PINK BLOOD」をシングルが続き、素晴らしい一体感のアルバムになりましたね。「ULTRA BLUE」の頃のHikkiの発言で、「DEEP RIVER」が詩の世界だとすれば「ULTRA BLUE」は画廊のような感じといった発言がありましたが、今回のアルバム「BADモード」も、前々作・前作である「Fantôme」「初恋」と比べるとアート寄りというか、曲それぞれに結構強めの色がある、色彩の世界だなと感じます。

 

今日は2月19日なので、配信としてのリリースからひと月経ちました。早いものですね…。しかしアルバム1枚でここまで強烈な体験をもたらしてくれるHikkiには、感謝しかありません。そしていよいよCDとしての発売(フラゲ日)まであと3日。すでにアルバム本編はむしゃぶり尽くしているのが不思議ですが、フィジカルで手にできる喜びはしっかり噛みしめたいと思います。楽しみですね。

失くしたものはもう心の一部でしょ

SpotifyのLiner Voice+で、「Find Love」の日本語版である「キレイな人 (Find Love)」を「アルバムに入れようか迷った」という発言がありましたが、入れてもらえて本当に良かったと思います。シンプルですがかなり攻めた表現も見られる歌詞に反響も多く、共感や感銘を受けtwitterなどで呟いている方も見受けられますが、自分もその一人です。

 

 歪な自分に優しくできない
 そんな日もあるし
 真っ直ぐには伸びないのが life

 

「BADモード」のリリース直後、プライベートで少ししんどくなる(かつ自己嫌悪に陥るような)出来事があり、アルバムに触れられた喜びの中に水を差されたような気分になってしまったのですが、この歌詞が聴こえてきて「そんな日もあるか」と気持ちの軌道修正ができました。以来、とてもお気に入りの箇所に。Hikkiが届けてくれる音楽というのはそんな風にいつも、生活に寄り添ってくれているもの。もっと大きな出来事や過去の呪縛に対しての救いになることもあるし、日常の細々した出来事の潤滑剤になってくれることもあるし、その連続なんですね。

 

元々「bland SHISEIDO」のキャンペーンソングとして「Find Love」を聴いたときからトラックがとても好みだったので、フルサイズで聴けるのを心待ちにしていたのですが、日本語版も同時に聴けて、待った甲斐がありました(笑)。ただ、メロディに言葉が乗った形では英語版の「Find Love」の方が好きです。逆に「キレイな人」は、英語に比べ間延びせずに日本語が乗っていてすごいなとも思いましたが、やはりこの歌は流れるようなメロディに乗って英語の細かい発音で歌われるのが心地よいなと。といいつつ一番好きなのはトラックなのですが、それこそ「Exodus」の楽曲を想起させるような電子音が、身体を揺らしたくなるようなリズムで鳴っていて、どこかオリエンタルな香りがするのがとても好きです。

 

この記事のタイトルにしている「失くしたものはもう心の一部でしょ」というフレーズにはハッとさせられました。それがずっとHikkiの音楽のテーマだったようにも感じています。失くしたものや選ばなかったものに対しての「慈悲」というか、それも含めての「自分」だし「あなた」だよ、という。そういったものへの血の通った表現を、グサッとワンフレーズで言ってもらえたような気持ちになりました。例えその失くしたものが「心の一部」だったとして、そのことに気付いているか、自己認識があるかということも重要で。Hikkiが歌う曲の世界の主人公はもうそれに気づいていて、だからこそ揺るがないし、強いんだなと改めて思います。そして聴く側(=主人公と心を重ねる側)も、圧倒的なパワーを貰うことが出来ますね。

気分じゃないの (Not In The Mood)

ニューアルバム「BADモード」での新曲で、今のところ一番抉られているのはこの曲です。初めて聴いた時には、繰り返し聴くのが怖いような、慄いてしまうような感覚すらありました。終盤に入っている息子さんの歌声(初めはエフェクトでいじったHikkiの声かと思った)、「できた」「OK? できた?」という息子さんとHikkiとのやり取り。それも微かに聴こえる程度で、もわぁ~という電子音の中へ消えていく。夢と現実を行ったり来たりしているような感覚で、確かにこれはいまHikkiと息子さんがレコーディングしたものかもしれませんが、この曲は何十年と年月が経っても聴かれているでしょう。大きくなった息子さんの目線で、夢のような微かな記憶、でもここには確かにあの日の自分とお母さんの声がする。そんな幼少期のイノセンスでしかない記憶。この歌は聴いているこちら側の深い記憶にもアクセスしてくるような、そんな破壊力があります。

 

Hikkiは幼少期から、お母さまである藤圭子さんの歌へ声を入れています。当時は嫌だったと振り返っていますが、今となってはそれがかけがえのない思い出であり、お母さんからの確かな愛情を、時を超えて感じているはずです。同じことを息子さんへもしてあげているんだなと思うと、感慨もひとしおです。そしてここから伝わる愛情というものは、宇多田ヒカルとその息子さんにだけあるものではなく、極めて普遍的なものだということ。誰しもが、誰かから誰かへ、自分からあなたへ、貰ったり伝えたことのある、肌で感じたことのある愛情が込められている。母親目線で書いた「あなた」という歌が、恋人同士や配偶者、はたまたファンから宇多田ヒカルへ、という想いすら感情移入できる歌になっているのと同じことですね。

 

歌詞についてはHikki自身もラジオなどで語っている通り、昨年12月28日の出来事をルポルタージュのように書かれているものですが、個人的には「♪私のポエム~ 買ってくれませんか~」のくだりで、高い声でそのポエムを売ってきた人のセリフのように歌い始めるのに、Hikki自身の行動である「♪ロエベの財布から出したお札で買った詩を読んだ」までがポエムを売ってきた人のセリフのメロディで歌われてるのが面白いなあと(笑)。Hikkiまでもそのポエムを売ってきた人に取り込まれてしまったような、そんな印象を受けました。

 

数回聴いているうちに抉られるような感覚は薄れてきて、単純に素敵な歌だなと思うようになってますが、初めのころに聴いていた感覚も忘れなくないと思い、いろいろ書いてみました。この歌がブツっと終わって「誰にも言わない」に繋がるのも一興です。「気分じゃないの」も含めて「誰にも言わない」んだなと。「♪今夜のことは 誰にも言わない」